グレンフィディック蒸溜所はどこにあるの?
グレンフィディック蒸溜所は、スコットランドの北東に位置するスペイサイド地方のダフタウンにあります。
『Glenfiddich(グレンフィディック)』はゲール語で『鹿の谷』という意味だそうです。その名前から、ロゴにも鹿があしらわれています。
また、ダフタウンの年間平均気温は以下のグラフの通りで、年間を通して気温差が少ないとても穏やかな土地です。
グレンフィディック蒸溜所の歴史について教えて!
1887年、ウィリアム・グラントとその子供9人と1人の石工職人の力を借りて、グレンフィディック蒸溜所は建てられました。同年の12月25日、クリスマスに最初の蒸溜が行われました。創業以降、グレンフィディックは家族経営で運営されている数少ない蒸溜所の一つです。
1923年、禁酒法時代に創設者ウィリアムの孫にあたる、グランド・ゴードンが運営に就きました。ゴードンはこんな時代でも、生産量を伸ばしていきました。
1957年、ウィリアムの曾孫にあたる、チャールズ・ゴードンは銅器職人を蒸溜所に常駐させることにこだわりました。銅器職人はグレンフィディックの蒸溜器の製造・修理の仕事を担っていました。また、まもなく1959年にはさらに専用のクーパレッジ(樽製造所)を設置し、樽に対しても強いこだわりを見せました。
1987年には100周年を記念したボトルを、1991年には蒸溜所づくりに関わったウィリアムの9人の子供を称え、1930年代から熟成を開始した9つの樽を使い50年物のウイスキーをボトリングしました。
1998年、5代目モルトマスターがシェリーで行われるソレラシステムをウイスキーに応用するという革新的な試みを始めました。ソレラシステムとは一番古い樽から原酒を半分程度取り出すと、取り出した分だけ、2番目の樽から継ぎ足すといようにして、常に熟成の進んだ原酒に新しい原酒を継ぎ足していく方法です。これにより、酒質の安定化と円熟した味わいを生み出してくれます。また、グレンフィディックのソレラバットは1998年から空にしたことがなく、常に半分はウイスキーが入った状態を保っているそうです。ソレラシステムを利用したウイスキーはグレンフィディック15年に使用されています。
2010年、熟成庫が大雪に襲われ、屋根が崩壊し熟成樽が寒空にさらされる事件が起きました。-19℃の極寒の中、職人たちは懸命に対処しました。その時、救い出された樽を使用して「スノーフェニックス」という名のウイスキーを作りました。
製法の特徴は?
原料について
グレンフィディックでは、グレンフィディック専門の麦芽業者(モルトスター)から、大麦を購入しています。
また、仕込み水は、蒸溜所近くのロビーデューの湧き水を使用します。
グレンフィディック蒸溜所では、毎日100トンもの大麦麦芽が運ばれてくるそうです。
糖化について
大麦麦芽は粉砕されると、糖化槽(マッシュタン)へ運ばれ、64℃に加熱されたロビーデューの湧き水と混ぜられます。マッシュタンの中では、マッシュナイフが回転しており、糖分の溶け出しを促進します。
糖化を開始してから約6時間後、麦汁と呼ばれる甘い液体が回収されます。
発酵について
グレンフィディック蒸溜所では容量約60000リットルの発酵槽が24基もあります。
糖化を終えた麦汁は発酵槽(ウォッシュバック)へ運ばれ、酵母が添加されます。
この時の酵母の添加割合は、40キロリットルの麦汁に対して250リットルの液体酵母が加えられます。
酵母の働きにより、麦汁に含まれる糖分がアルコールに変換されます。発酵が進むにつれ、酵母は様々な香味成分も生成し、グレンフィディックの特徴である洋梨の風味はここで生まれます。
発酵は2~3日かけて行われ、最終的にはウォッシュと呼ばれるアルコール度数最大9%の液体になります。
蒸溜について
グレンフィディックでは年間1000万リットルの生産量を支えるために、10基の初留窯(ウォッシュスチル)と20基の再溜窯(スピリットスチル)の合計30基ものポットスチルがあります。
発酵を終えたウォッシュはまず、ウォッシュスチルへ運ばれ、最初の蒸溜が行われます。これにより得られる蒸溜液はローワインと呼ばれるアルコール度数約12%の無色透明の液体になります。
次に、ローワインはスピリットスチルへ運ばれ、2回目の蒸溜が行われます、このとき、蒸溜の最初の部分と最後の部分は熟成に適していないためカットされ、ハートと呼ばれる中間部分のみが回収されます。この操作をミドルカットと呼びます。
回収した本溜分はニューメイクと呼ばれる、アルコール度数約70%の液体になります。
グレンフィディックのスピリットスチルの形は2種類あり、それぞれでの蒸溜液を均等に混ぜ合わせて熟成に使用されます。
また、ポットスチルはすべて、ガスにより直接加熱されます。
樽詰めと熟成について
ニューメイクは、ロビーデューの湧き水を加えてアルコール度数が63.5%になるように加水してから樽詰めされます。グレンフィディック蒸溜所では、バーボン樽やシェリー樽、ラム樽などを熟成に使用しています。
ニューメイクが詰められた樽は、敷地内にある43棟からなる巨大な熟成庫に運ばれます。
それぞれの樽は、好ましい熟成感に達するまで何年間もの長い間大切に保管されます。
それぞれの樽の個性を把握し、絶妙にブレンドし、時にはブレンド後に数か月後熟することでグレンフィディックができ上がります。
おすすめ動画
以下にグレンフィディック蒸溜所の紹介をしている、おすすめの動画を貼っておきます。
動画の内容はどちらも英語なのですが、英語が苦手な方は1番目の動画が映像メインで英語字幕での説明のみなので、ここまでの製法を読まれた方なら十分楽しめる内容になっていると思います。2番目は実際のツアーの映像で、英語で詳しく製法の説明をしています。これらの動画を通して、なかなか行くことが難しいグレンフィディック蒸留所の疑似工場見学体験を楽しんでいただけたら幸いです。
英語が苦手な人向けおすすめ動画:Glenfiddich distillery in Speyside, Scotland(YouTube)
英語が得意な人向けおすすめ動画:Discover Glenfiddich Distillery with the European Bartender School! (Youtube)
グレンフィディック蒸溜所はどんなウイスキーを出しているの?
以下、紹介文・テイスティングノートなどはグレンフィディックのホームぺージより引用(一部筆者改定)しています。
グレンフィディック 12年
当時から変わらず清らかで軟らかいハイランドの湧水を使用し、特徴的なフルーティーさは創業時からの強いこだわり。上質なアメリカンオーク樽とヨーロピアンシェリー樽で最低12年間、丁寧に熟成。 さらに後熟することで甘く、複雑なオークの風味を作り上げます。滑らか且つ芳醇で長い余韻の12年スペシャルリザーブはグレンフィディック独特の スペイサイドスタイルの完璧な一品と言われ、最高の味わいだと広く称賛されています。
テイスティングノート:
色 | 淡い金色 |
香り | 洋梨・レモン・フルーティーな熟成香 |
味 | 甘くフルーティー・クリーム |
余韻 | やわらかな甘み・繊細で軽やか |
グレンフィディック 15年
ソレラシステムが生み出す円熟の味わい。
我々の革新の歴史の代表例であるこの15年ソレラリザーブはモルトマスターによって、シェリー樽熟成に用いられるソレラシステムを応用することで生み出されました。 そのほのかにスパイシーで円熟した味わいは“ソレラバット(大桶)”の錬金術の賜物とも言われ、バーボン樽、ホワイトオーク新樽、シェリー樽の3種の樽で熟成したモルトウイスキーを ソレラバット(大桶)で約6ヶ月間後熟することで誕生します。
使用しているソレラバット(大桶)は、1998年から1度も空にしたことがなく常に半分はウイスキーが入っている状態が保たれています。
テイスティングノート:
色 | 金色 |
香り | 甘くフルーティー・はちみつ・レーズン |
味 | 広がりのある滑らかさ・バニラ・シナモン・ほのかにスパイシー |
余韻 | 長く甘い豊かな余韻 |
グレンフィディック 18年
厳選された原酒と個別管理による深く豊かな味わい
最低18年以上熟成されたスパニッシュオロロソシェリー樽原酒とアメリカンオーク樽を厳選してヴァッティングし、その後最低3ヶ月後熟。スモールバッチ(小ロット)で個別に厳格に管理することで、深く、豊かな味わいを表現している。偽りのない優れたシングルモルトは、18年間に渡る徹底した管理と心遣いに加えて脈々と受け継がれるクラフトマンシップによる賜物です。
テイスティングノート:
色 | 濃い赤茶色 |
香り | 熟した果実・シナモン・ウッディ |
味 | ドライフルーツ・ナッツ・豊かな樽香 |
余韻 | 温かみのある豊かで長い余韻 |
グレンフィディック 21年
カリビアンラム樽仕上げのまろやかで複雑な味わい。
21年間丹念に蒸溜所で熟成された申し分のない伝統的なスペイサイドウイスキー。 最低21年以上熟成されたヨーロピアンシェリー樽原酒とアメリカンオーク樽原酒をヴァッティングし、その後4ヶ月間カリビアンラム樽にてフィニッシュ。エキゾチックなジンジャー、イチジク、ライムなど熟成感のあるスムースでまろやかな味わいに複雑さが加わります。
テイスティングノート:
色 | 濃い金色 |
香り | バニラ・フローラル・クリーム・バナナ・いちじく |
味 | 少しのスモーキー・ゆず・ジンジャー |
余韻 | 深みのある豊かで長い余韻・複雑な熟成感 |
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