連続式蒸溜機(パテントスチル/カラムスチル)の歴史

雑談

連続式蒸溜機はパテントスチルとも呼ばれる、一般的にアメリカのバーボンや、スコットランドのグレーンウイスキーを蒸溜する際に使われる蒸溜機です。パテントスチルの「パテント」とは英語で「特許」という意味なのですが、なぜこのような名前がついたのか、その歴史が面白かったので紹介します。

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連続式蒸溜機の発明

連続式蒸溜機は1826年、ロバート・スタインによって発明されたといわれています。発明のきっかけは、ロンドンにおける税金対策でした。1780年から1790年代にポット・スチルの容量に応じて税金をかける制度が導入されました。小さい容量のポット・スチルなら税金はこれくらい、大きいポット・スチルならこれくらい、といった感じです。

そこで、ロバートは容量を大きくせずに、効率よく蒸溜を行うことができないかを考え、連続式蒸溜機を発明しました。この蒸溜機は収税官吏だったイーニアス・コフィ―の目に留まり、コフィ―はこの連続式蒸溜機を改良して、1831年には現在使われている蒸溜機の原型ともいえるものを作りました。その際、コフィ―は特許(パテント)を取得したため、連続式蒸溜機はパテント・スチルまたはコフィ―・スチルと呼ばれるようになりました。

コフィ―はアイルランド人だったため、この連続式蒸溜機をアイルランドに売り込みに行ったのですが、当時は、ウイスキー産業は急成長の最中でアイルランドの蒸溜所はどこもポットスチルによる3回蒸溜を変える必要性も動機もありませんでした。仕方なくスコットランドなどへ売り込み先を変更し、結果として、ローランド地方の蒸溜所が連続式蒸溜機を取り入れました。現在、グレーンウイスキーの主要生産地であるローランドでの、グレーンウイスキーの生産はここから始まりました。

モルトウイスキーがそのフルボディさや香りの高さがゆえにラウドスピリッツ(うるさい酒)と言われるのに対し、グレーンウイスキーはそのスッキリさや主張の少なさからサイレントスピリッツ(沈黙の酒)と言われます。この二つを混ぜることでバランスの取れたブレンデッドウイスキーが誕生し、万人受けするブレンデッドウイスキーは世界的にウイスキーを広めるのに活躍しました。

このような経緯で、現在の連続式蒸溜機は存在しています。発明者のロバートは税金対策のために発明したのに、収税官吏であったコフィ―に横取りされたような状態なので、なんだかかわいそうな気がしますね。逆に、コフィ―は商売上手だったのでしょう。

ウイスキーを作るための機械という認識しかしてこなかった連続式蒸溜機に、このような人間ドラマがあると知ると、ブレンデッドウイスキーを飲むときに少し感慨深いものがあります。

みなさんも、グレーンウイスキーを飲むときはこの話を思い出してみてください。
この記事が何かの役に立てれば幸いです。

参考

・『ウイスキーの科学』p117~121古賀邦正
・『スコッチ三昧』p174~179土屋守
・『ウイスキー通』p72,187~188土屋守

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