今回は、飲酒をしたとき、アルコールが脳のどの分野に影響を与えるのか、そしてそれが酔っぱらったときの状態にどのような関係があるのかを紹介します。
酔っ払いに絡まれたときなど「この人は今、小脳がマヒしてるからしょうがない(笑)」という生物学的な視点で見れば、幾分か割り切れるのかなと思います(笑)
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酩酊度と脳
どれくらい酔っぱらっているのかというのを「酩酊度(めいていど)」という評価方法で6段階に分けています。詳しい内容は以下の記事を参考にしてください。
酩酊度が進むと身体機能に様々な異常が出てくるのですが、これらはすべてアルコールによって脳の機能が麻痺してしまうために起こります。麻痺させていく脳の領域の順番は、大脳新皮質→小脳→間脳→延髄です。脳の外側から中心に向かって順に機能を麻痺させていくので、それぞれの脳の機能に応じた症状が順に出てきます。
大脳新皮質は、脳の表面を占める組織で理性や思考力をつかさどっています。進化的に発展してきた組織で、下等生物ではこの組織は小さく、高等生物になるにしたがって大きくなっていきます。特に人間は他の生物に比べ大脳新皮質が非常に大きな組織になっており、これが知性のある人間らしさの大きな要因となっています。大脳新皮質がアルコールによって麻痺してくると、まず活発、積極的、短絡的な言動になってきます。さらに麻痺が進むと、場所や時間の認識力の低下、催眠作用などが出てきます。
大脳旧皮質は、大脳のなかで本能や習慣といった生存に関係する機能をつかさどる組織です。この組織は大脳新皮質に比べなかなか麻痺しないため、記憶や認識力が低下した状態でも帰宅できるのは、この大脳旧皮質のおかげです。
さらに酔いが進むと次は小脳が麻痺してきます。小脳は、運動機能の調整をしているため、ろれつが回らなくなったり、千鳥足になったりします。
次に酔いが進むと間脳が麻痺してきます。間脳は、視床、視床下部からなっている自律神経の中枢です。間脳が麻痺してくると、血圧低下、おう吐、めまいなどの症状が出てきます。
そして、最後に麻痺してくるのが延髄です。延髄は、循環器、消化、呼吸など生命維持に不可欠な機能をつかさどっています。延髄が麻痺すると気絶、体温低下、呼吸麻痺など最終的には死に至ります。
飲酒時、今回説明した症状と自分の状態を比べて、楽しく安全にお酒を飲みましょう!
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参考
・『酒の科学』吉澤淑 朝倉書店
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