蒸溜によって生まれる香り、消える香り【蒸溜時の化学反応】

ウイスキーの科学

今回は蒸溜時の化学反応について解説したいと思います。

蒸溜は発酵液を高温で熱するため、様々な化学反応が促進されます。その過程で香味成分が生成されたり、消える香りもあります。ウイスキーの蒸溜は単にエタノール成分の濃縮だけではない、劇的な反応過程である事がわかっていただけると思います。

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生まれる香り

まず、蒸溜の過程によって生まれる香りについて解説します。
蒸溜によって生成される香り成分で特徴的なものはβ-ダマセノンとフルフラールです。(参考1)

β-ダマセノンはバラのような香り、フルフラールはアーモンドに似た香りがするといわれています。
これらの成分はモロミ(発酵液)には存在せず、大麦やトウモロコシといった原料にもともと含まれている物質(前駆体)が、蒸溜による熱反応で合成されることによってニューポットに含まれると考えられています。

また、酵母由来のチアミンが分解してチアゾール類という強いイーストフレーバーが生成されます。(参考2)

蒸溜はポットスチルという銅製の器で行われるため、銅の触媒反応によりメイラード反応やエステル化反応を促進することがわかっており、それにより香ばしい香りであるピラジン類など、様々な香味成分が生成されます。

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消える香り

次に、蒸溜の過程で消える香りについて解説します。
蒸溜の過程で消える香りで代表的なものは「硫黄化合物」と「揮発性が高すぎるまたは低すぎる物質」です。

硫黄化合物は銅と反応し不溶性物質になることが知られています。そのため、銅製のポットスチルで蒸溜すると、蒸気中の硫黄化合物がポットスチルと接触すると不溶性物質になりポットスチルに吸着します。これにより、ニューポットに存在する硫黄化合物が減少します。

硫黄化合物は独特の不快臭がするため、蒸溜による硫黄化合物の減少はウイスキーづくりにおいて重要な役割を果たします。

次に、蒸溜によって消える香り「揮発性が高すぎるまたは低すぎる物質」について紹介します。ニューポットは蒸溜して最初の液(ヘッド)と後半の蒸溜液(テール)はカットされ、その中間のハートと呼ばれる部分だけが樽詰めされウイスキーとなります。これは、ミドルカットと呼ばれる工程です。ヘッドは雑味やメタノールといった揮発性の高い有害な物質の濃度が高く、テールはエタノールの濃度が低く、揮発性の低い物質に好ましくない成分があるなどの理由でカットされます。

つまり、揮発性の高すぎるまたは低すぎる成分はミドルカットにより取り除かれるため、ニューポットからは消えてしまいます。この操作は、各蒸溜所がそれぞれ目的の原酒に合わせてカットするタイミングを見極めており、ウイスキーづくりにおいて人間が大きく介入できる数少ない重要な工程です。

参考

(1)酒類の熟成についての一考察(1)-ウイスキーの熟成機構を参考にして- 古賀邦正
(2)『ウイスキーの香り』増 田 正 裕 ・杉 林 勝 男

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終わりに

以上、蒸溜によって生まれる香り、消える香りを紹介しました。
あのカッコいいポットスチルが銅でできていることにも意味があったんですね。

蒸溜酒ならではの面白い反応過程だと思いました。
この記事が少しでも、役に立てれば幸いです。

また、お会いしましょう。
乾杯!

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