匂いの感じ方は生まれつき違う?!人の嗅覚の科学

ウイスキーの科学

今回は人の嗅覚について考えていこうと思います。

「人によって匂いの感じ方が違う」
「男女によって嗅覚が違う」
「自分の部屋の匂いは感じない」

など、人の嗅覚の違いに関する話を聞いたこと・感じたことがある人は多いのではないでしょうか?
この記事では、それらの違いがなぜ出てくるのか、どのように感じ方が違うのかについて解説していきます。

先天的なもの後天的なもの

個人差というものは大きく「先天的な違い」と「後天的な違い」という分類ができます。

「先天的な違い」とは、生まれつき違うものを指します。目の色や、肌の色、お酒に強いなど、もともとの遺伝子の違いによって出てくるものです。先天的な違いは生活環境によって変えることが難しい違いになります。

それに対して「後天的な違い」とは、生活環境の違いによって出てくる違いを指します。テストの点数の違いとか、読み書きの能力、箸の持ち方など、どのような環境で生きてきたかによって出てくる違いです。この違いは先天的なものと比べ、訓練・学習によってコントロールしやすい違いになります。

先天的な違い後天的な違い
生まれつきの遺伝子の違いなどで出てくるもの
・目の色
・肌の色
・お酒の強さ
など
生活環境の違いによって出てくるもの
・テストの点数
・読み書きの能力
・箸の持ち方
など
訓練などによってコントロールしにくいコントロールしやすい

また、「先天的」「後天的」違いの両方が影響するような違いもたくさんあります。
例えば、筋肉の量の違いは、女性に比べ男性の方がつきやすいという「先天的な違い」がありますが、筋トレをどれだけやるかという「後天的な違い」によってコントロールできるものです。

ほとんどの個人差というのはこのように先天的・後天的の両方の影響を受けます。筋肉量や体重、身長などがそうです。

これらの違いは先天的な違いが何パーセントで後天的な違いが何パーセントというのは一概には言えません。男性によっても筋肉がつきやすい人と、つきにくい人がいるように、先天的なもの後天的なものがどれだけ影響してくるかにも個人差があるのです。

嗅覚にも同様のことが言えます。先天的なものによって出てくる違い。後天的なものによって出てくる違い。これらについて詳しく考えていきましょう。

先天的な嗅覚の違い

ここからは、嗅覚の先天的な違いについて以下の2つを具体的にみていきます。

・男女差による嗅覚の違い
・遺伝子型による違い

男女差による嗅覚の違い

2014年に発表された論文で、女性の脳は男性に比べ、嗅覚を処理する領域の細胞数が平均43%、神経細胞にいたっては50%も多いということがわかりました。

ここから、女性は男性に比べ嗅覚情報を処理する能力が高いことがわかります。
女性の方が匂いに敏感だということが科学的に証明されたということですね。

遺伝子型による違い

次に「遺伝子型による違い」についてみていきます。

遺伝子は父親母親両方から半分ずつ受け継ぎます。両親が二人ともお酒に強かったら、その子供はお酒に強い可能性が非常に高く、逆に弱かった場合、その子供はお酒に弱くなるというのは身近に感じる遺伝子型による違いです。

同じように、嗅覚も遺伝子によって感じやすくなったり感じにくくなったりすることがわかっています。

具体的には「麦芽」「リンゴ」「ブルーチーズ」などの香りの感じ方が遺伝子によって左右されていることがわかっています。

自分の遺伝子がどうなっているかは遺伝子検査を行えばわかります。
一般向けに販売されている遺伝子検査キットが多数あるので興味のある方は試してみてください。

遺伝子検査の流れ

ここからは私が実際に受けた遺伝子検査の流れを紹介します。
私が受けたのはGeneLifeが提供しているGenesis2.0です。

この遺伝子検査キットは約360項目の検査対象があり、香りの感じ方の違いはもちろん、生活習慣病やがんなどの疾患リスク、美容・ダイエットに関するものまで調べることができます。

約3万円とかなり高額に感じましたが、遺伝子は一生変わることがないので一度行えばそれ以降は二度と同じ検査はやらなくて済むので、定期的にやらなくてはいけない人間ドックに比べたらコスパはいいのかなとも思いました。

遺伝子検査はとても簡単でした。ネットから商品を注文すると、数日後にキットが届くので中に書いてある説明書に従って唾液を採取しポストに投函するだけです。実質数分しかかかりません。

投函してからしばらくすると登録したメールアドレスに検査が完了した知らせが届くので、GeneLifeのページへ行き、登録したアカウントでログインすると結果が見れます。

以下は私の嗅覚に関する遺伝子検査の結果です。

感じやすいからいいとか、感じにくいから悪いという話ではないのですが、ウイスキー好きな私からすると麦芽が感じやすい傾向にあるのは嬉しいかったです(笑)

また、各項目は詳細を見ることができます。
麦芽の場合は以下のような情報が出ます。

90%以上が感じやすい傾向だったんですね(笑)

これらの結果はあくまで傾向ですので、感じにくい傾向という結果が出ても、実際は感じやすい人も存在しますし、後述の後天的に感じやすさが変化することもあるので、嗅覚の項目に関しては深く考えすぎないほうがいいと思います。

主に癌や感染症のかかりやすさなどの疾患関係の検査結果を参考に生活習慣を見直すような使い方がいいのかなと思いました。

余談ですが「飲酒量」の項目もバッチリ多い傾向でした(笑)

後天的な嗅覚の違い

次に、後天的な嗅覚の違いについて見ていきます。

風邪で鼻が詰まって匂いがわからないとか、コロナで嗅覚異常があるとかが後天的な嗅覚の違いになります。

マイナス面だけでなく、一流のシェフがスパイスの香りをかぎ分けられたり、ワインソムリエがワインの銘柄を当てられるほど嗅覚が鋭くなるのも後天的な違いによるものが大きいです

ここでは、嗅覚の訓練の方法を紹介します。

嗅覚の訓練

嗅覚は訓練をすることで後天的に能力を高めることが可能です

嗅覚は60歳を過ぎたあたりから急に能力が衰えてくることが知られています。

嗅覚を鍛えると、
・日々の食事がより豊かに感じる
・脳機能の衰えを予防してくれる
・ガス漏れ、腐った食品などの危険を回避することができる

などのメリットが多数あります。また若い人でも嗅覚は日々の訓練によって徐々に向上していくものですので、ぜひ嗅覚の訓練をしてみてください。

嗅覚を鍛える方法をいくつか紹介します。

1.感じた匂いを言葉で表現する

この方法はとても簡単です。日々、食べるもの、飲むもの、移動中の空気の匂いなどに意識を向けて、その匂いを自分の言葉で表現するだけです。
言葉で表現することを意識すると、より集中して匂いを探したり、嗅覚を処理する能の領域以外の、言語や記億の領域も使うのでより脳が鍛えられます。

また、これは「レモンの香り」とか「シナモンの香り」のような具体的な表現や、「軽い香り」「黒い香り」などの抽象的な表現どちらでも構いません。

これは、思うだけでもいいのですが、ぜひノートに書きだすことをおすすめします。
一日一回簡単なものでいいので嗅いだモノと、その香りを記録していくのです。そうすると、自然と香りに意識をむけるクセがつくのと、だんだん感じる香りの数が増えていくのが目に見えてわかるのでモチベーションが向上するといった効果が期待できます。

嗅覚の訓練は筋トレと一緒です!毎日の積み重ねで鍛えていくものなので、焦らずゆっくり楽しみながらやりましょう!

2.アロマキットを使う

次に紹介するのはアロマキットを使う方法です。

以下のようなマスターウイスキーアロマキットという商品が販売されています。

このキットはレモンやライムをはじめ、ベーコン、クルミ、蜂蜜など88種類の香りを抽出し小瓶にいれています。使い方は、小瓶をランダムにとってその匂いを当てるというゲームをひたすら繰り返すだけです。

慣れてきたら、2種類の小瓶を同時に嗅いだりしていくとより能力が鍛えられると思います。
この方法は、ライムの香りはコレ、クルミの香りはコレというように香りと対象がつながっていくので、上記の「感じた匂いを言葉で表現する」と組み合わせると相乗効果でより嗅覚が鍛えられます。

88種類すべて嗅ぎ分けるのは数年間訓練をしても難しいと思いますので、焦らず楽しみながらやるのがいいと思います。

また、アロマキットはウイスキー向けに限らず、ワイン向けのものや、24種類と少なめのものまで様々な種類があるので自分の目的に合ったものを探してみてください。

終わりに

以上、人の嗅覚の違いについて解説しました。

嗅覚はお酒に限らず、人生を豊かにしてくれるものだと私は思います。
一緒に楽しみながら嗅覚を鍛えましょう!

それではまた、お会いしましょう。

乾杯!

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