【樽の科学】木材の乾燥工程がウイスキーに与える影響

ウイスキーの科学

ウイスキーづくりにかかる時間の99%以上が樽熟成の工程であり、味や香りの善し悪しに大きく左右するほど、樽はウイスキーにとって欠かせないものです。

今回は、そんな樽の製法、特に乾燥工程がどのうようにウイスキーの香味に影響を与えるのかを紹介します。

樽の材料-ホワイトオーク-

ウイスキーの熟成に使われる樽の材料はアメリカン・ホワイトオークがほとんどです。スコッチ、ジャパニーズなどは、ほとんどがバーボン樽を熟成に使用しており、バーボン樽はアメリカン・ホワイトオークからつくられます。他にも、ヨーロピアンオーク、スパニッシュオークや日本のミズナラなども使用されます。

アメリカン・ホワイトオークは、落葉広葉樹でドングリの成る木です。導管のなかに「チローズ(Tyloses)」という成分が詰まっているため、液漏れがしにくく、かつ北米に広く分布しており安価に手に入るという理由からウイスキー樽として使用されています。

ウイスキー樽に使用するアメリカン・ホワイトオークは樹齢100年程度のものを選び伐採します。伐採した大木から「柾目取り(まさめどり)」という方法で板を切り出します。柾目取りとは木の中心から表皮に方に向かって放射状に板を切り出す方法で、表皮に沿って切り出す「板目取り」と比べ無駄な部分が多く出ててしまう贅沢な切り出し方です。柾目取りをすることで導管や放射組織が板の表面に現れにくくなります。導管や放射組織は液体が通りやすい組織であり、これらが表面に多く存在すると液漏れにつながってしまいます。そのためウイスキー樽用では、あえて柾目取りという贅沢な方法で切り出しています。

切り出した板は樽に加工される前に、乾燥されます。

乾燥工程がウイスキーに与える影響

切り出された板は十分に乾燥させないと、樽に成形後に収縮や歪みを引き起こし液漏れの原因になってしまうだけでなく、生木の香りがウイスキーについてしまうという問題を引き起こします。

乾燥の方法は大きく「キルン乾燥」と「天日乾燥」があります。
バーボンウイスキーの樽に使用している板の大部分は、数週間~7か月程度て乾燥を終わらせています。アメリカのミズリー州で2~3週間天日乾燥を行った後、ケンタッキー州に運び専用の機械を使ってキルン乾燥を数か月行います。その具体的な方法は企業秘密ですが、人工的に水分を抜いています。

キルン乾燥に対して、スコッチのグレンモ―レンジ社は2年間の天日乾燥にこだわっています。これは、雨ざらしにすることで木の不快成分がぬけ、さらに製樽後も変化が少なくウイスキー樽として優れるようになるからだそうです。また、最近の研究で人工乾燥の木材で作った樽で熟成させると青臭い成分がウイスキーに出てしまうのに対し、天日乾燥では柑橘系のフルーツやココナッツ、バニラのような甘い香りがウイスキーに与えられることがわかりました。

これは、長時間日光にさらされることで、木の成分が紫外線により分解、また他の成分と反応しこのような香味成分が作られたのではないかと考えられます。

参考

・『ウイスキー通』p107-111 土屋守 新潮社
・『ウイスキーの科学』p113-115 古賀邦正 講談社

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