今回はウイスキー樽の大きさが熟成に与える影響について紹介します。
樽とは
樽とは円筒形の容器のことを指し、木製、プラスチック製、合成樹脂などから作られます。用途は様々で、酒類の熟成、運搬、保存などに使われます。ウイスキーの熟成には、樹齢100~150年ほどのホワイトオークから作られる胴の中央部が膨らんだ形のものが一般的で、手入れの行き届いた良い樽は、最長50年以上持つそうです。
ウイスキーの熟成に使われる樽の種類について
樽の大きさ・種類の違い
クォーターカスク
クォーターカスクはアメリカンスタンダードバレル(ASB)の1/4(クォーター)サイズの樽です。他の樽に比べ液量に対して木材の比率が大きくなるため、早く熟成する傾向があります。しかし、その熟成の仕方は単に他の樽より早くなるというわけではなく、まちまちであるため「仕上げ*」のために最後に数か月だけ使用する場合に最も効果的です。
*ブレンド後のウイスキーを再度数か月間、樽に戻して味・香りを整えること。また、特定の樽の香りを与えること。
アメリカンスタンダードバレル(ASB)
主にアメリカのバーボンウイスキーに使用されるサイズの樽です。アメリカの法律でバーボンに使用する樽は、使用前に内側表面を焼き付け(チャーリング)炭化皮膜処理をしたホワイトオークの新樽である事が義務付けられています。バーボンに使用するためには新樽である必要があるため、一度使用された樽はバーボンのために再利用できません。そのため、使用後の樽はスコットランドやアイルランドへ運ばれ、各地のウイスキーの熟成のために再利用されます。
ホッグスヘッド
ホッグスヘッドはスコッチウイスキーの熟成に使用される2番目に一般的なタイプの樽です。1番目は上記のASB樽です。ホッグスヘッドは一般的にアメリカのホワイトオークから作られたり、ASB樽を解体し、組みなおして作られたりします。ASB樽と比較してサイズが大きいため、より長期の熟成に向いています。また、スコッチウイスキーの熟成前にウイスキー以外の酒類の熟成に使用されることもあり、シェリーの熟成に使用するのが最も一般的です。
バリック
バリックはホッグスヘッドよりやや大きめで一般的に、ワインの熟成に使用されます。通常フレンチオークで作られますが、アメリカンホワイトオークで作られることもあります。歴史的にはウイスキーの熟成に使用することは稀でしたが、ここ数十年で使用例が増えています。
パンチョン
パンチョンはシェリーの熟成に使用される2番目に一般的な樽です。1番は後述のバットです。通常スペインのオーク材で作られます。
バット
バットはシェリーの熟成に使用される最も一般的な樽です。伝統的にはスペインのオーク材から作られますが、アメリカンホワイトオークから作られるものも多数あります。シェリーの熟成後は、スコッチウイスキーの熟成に使用されることがほとんどです。
マシンパンチョン
マシンパンチョンはアメリカのホワイトオークから作られ、ラム酒の熟成に使用されるのが一般的です。近年、ウイスキーの熟成に使用され始めるようになりました。
ポートパイプ
ポートパイプはポートワインを熟成させるための樽です。縦長で幅はASB樽に近いです。また、使用後はスコッチウイスキーの「仕上げ*」に使用されます。
*ブレンド後のウイスキーを再度数か月間、樽に戻して味・香りを整えること。また、特定の樽の香りを与えること。
ドラム
ドラムはマディラワインを熟成させるために使用される標準的な樽です。厚いフレンチオークで作られています。スコッチウイスキーの熟成に使用されることは稀で、使用される際は主に「仕上げ*」のために使用されます。
*ブレンド後のウイスキーを再度数か月間、樽に戻して味・香りを整えること。また、特定の樽の香りを与えること。
樽の大きさが熟成に与える影響について
ウイスキー熟成に使われる樽は、一般的に胴の中央部が膨らんだラグビーボールのような形をしています。この形には、横に倒して運ぶ際、転がしやすく簡単に方向転換ができるという利点と、力が分散し壊れにくくなるという強度面の利点があります。
また、樽の大きさは熟成の早さに影響を与えます。熟成の早さは樽の容量に対して表面積が大きくなればなるほど早く進みます。これは、中に入れたスピリットがより多くの木と接触できるため、木の成分の溶出などが早くなるからです。
例えば、形が一定の樽で容量が30、200、250、500リットルそれぞれの樽を想定します。体積と表面積の比率は、一般的な樽の容量200リットルを基準にすると、1.9、1、0.9、0.7となります。単純にこの比率のみで考えると、容量30リットルの樽は200リットルの樽に比べ約2倍のスピードで熟成すると予想されます。逆に、容量が500リットルの樽は0.7倍のスピードで熟成すると予想されるため、より長期の熟成には、より容量の大きな樽が好ましいと考えられます。
これは、単純に「樽からの影響」のみを計算しているため、樽以外の要因、気温・湿度の変化や香味成分の化学反応による熟成スピードは無視しているという点に注意してください。
樽以外の要因、例えば「未熟成香」が消えるためには樽の表面積との比率ではなく単純な「時間経過」が必要であると考えられます。詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
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