酵母がウイスキーに与える影響/ウイスキー酵母とエール酵母の2種類を使用すると美味しくなる?!

ウイスキーの科学

今回はウイスキーの製造工程の一つ「発酵」、その中でもとりわけ「酵母」について今回は考えていこうと思います。

アメリカでは各蒸溜所が自社酵母を培養していることが多いのですが、スコットランドではウイスキー酵母(Distiller’s Yeast)とエール酵母の2種類を使用していることがほとんどです。

2006年に報告された『酵母特性がウイスキー原酒特性に及ぼす影響』(四方秀子)で、酵母の違いがニューポット(熟成前のウイスキー)に与える影響について面白い報告をしています。

今回はこちらの論文の内容を、専門用語をなるべく使わずに、わかりやすく紹介します。

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ウイスキー酵母(Distiller’s Yeast)とは

ウイスキー酵母は効率よくエタノール発酵を行う酵母として1950年代に開発されました。効率がよいというのは少ない時間で、多くのエタノールを生成できることを意味します。

また、フーゼル類という吟醸香を示す成分や、エステル類というフルーティで華やかな香りを示す成分を生成することが知られています。

主に、この二つ「発酵力」と「生成する香り」がウイスキーに適していたため、現在では多くの蒸溜所で使用されています。

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ビール酵母(Brewer’s Yeast)とは

その名の通りビールに使用されている酵母で、大きく「エール酵母」と「ラガー酵母」に分けられます。それぞれ、醸造所によって独自の酵母を使用していることが多く、一概には言えませんがおおむね以下のような傾向があります。

エール酵母は15~25℃の温度帯でよく働き、風味が豊かで香り高いビールを作るときに使用されます。また、エール酵母を使用した発酵は、増殖したエール酵母が液面に浮かび上がることから「上面発酵」と呼ばれます。

ラガー酵母は5~11℃と比較的低温環境でよく働き、香り成分はそれほど作らず、ドライですっきりしたビールを作るときに使用されます。また、ラガー酵母を使用した発酵は、増殖したラガー酵母が発酵液の下の方に蓄積していくことから「下面発酵」と呼ばれます。

ビール酵母の違いがニューポットに与える影響

上の図は「エール酵母」「ラガー酵母」「ドライエール酵母」それぞれを使用し、蒸溜したニューポットを官能評価した結果です。エール酵母とラガー酵母はそれぞれ生の状態で仕入れたものを使用しています。また、官能評価は6人の専門パネラーがそれぞれ評価した値を平均しています。

エール酵母は、エステリー、イースティー、フルボディの項目の評価が高く、ラガー酵母は全体的に評価が低い傾向にありました。また、ドライエール酵母は複雑さのみが突出して高い評価でした。

この結果から、エール酵母はやはり香りが豊かになることがわかりましたが、一方で乾燥させたエール酵母を使用すると、複雑さは向上したものの、エステル香、イースティなどはラガー酵母と同程度まで低下しました。これは、乾燥状態と生の状態ではその後の培養中での酵母の代謝が大きく変わっていることを示唆しています。

加える前の、酵母の培養状態と酵母の種類がニューポットの品質に影響を与えていることがわかりました。

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ウイスキー酵母とエール酵母

次に、「ウイスキー酵母のみ」と「エール酵母のみ」「ウイスキー酵母とエール酵母の混合」の3種類の条件で発酵し、蒸溜したニューポットの官能評価の結果を示します。

この結果から、ウイスキー酵母、エール酵母それぞれ単独で使用したよりも混合して使用したほうが明らかにボディと複雑さが向上することがわかりました。

フーゼル類、エステル類の生成量は、エール酵母<混合<ウイスキー酵母、の順で多くなっていましたが、独特の香りを持つことが多いS(硫黄)化合物の生成量は混合した場合が一番多い結果になりました。S化合物は微量にしか生成されませんが、これらはボディ感と複雑さに影響を与える事が知られています。

エール酵母は培養後24時間ほどすると死滅していき、ウイスキー酵母は60時間ほどで死滅していくのですが、エール酵母とウイスキー酵母を混合するとエール酵母の寿命が36時間程度に延長することがわかりました。これは、エール酵母単独で使用したものと混合したものとではエール酵母の代謝が変化したことを意味しています。また、逆にウイスキー酵母は混合したほうが死滅までの時間が早くなっていました。

これらの変化がS化合物の生成量の変化に繋がったのではないかと考えられます。

実際、培養初期の「フレッシュ酵母」と培養終期の「成熟酵母」を比較すると、成熟酵母の方がニューポットのボディ感、複雑さが明らかに向上することがわかり、S化合物の生成量も2倍以上多くなることがわかりました。

混合すると複雑さ、ボディ感が増加したのは、エール酵母の寿命が延長し「成熟酵母」の状態が長く続いたためと考えられます。

また、フレッシュ酵母と成熟酵母を観察すると、成熟酵母では液胞の肥大やグリコーゲン顆粒の減少などが確認され、生理条件が大きく異なっていることがわかりました。

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終わりに

経験則に基づいて行われてきた「ウイスキー酵母とエール酵母の混合」が科学的にウイスキーにどのように影響するかが証明されました。

今後、科学の発展によりさらに詳細に酵母の力が証明されてくると思われます。
近い将来、目的のウイスキーの香味に合わせたオーダーメイド酵母なんかが出てきたら面白そうですね。

それでは、またお会いしましょう!

乾杯

コメント

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