5大ウイスキーの成分の比較

ウイスキーの科学

今回は、5大ウイスキーに含まれる香味成分を調べたデータがありましたので、それを紹介します。

5大ウイスキーとは

5大ウイスキーとは、日本、スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダのウイスキーの5大生産国で作られたウイスキーを指します。それぞれの国で作られたウイスキーは、日本はジャパニーズウイスキー、スコットランドはスコッチ、アイルランドはアイリッシュ、アメリカはバーボンまたはアメリカンウイスキー、カナダはカナディアンウイスキーと呼びます。

それぞれの国でウイスキーに対する法律や製法が異なり、これにより国ごとにウイスキーの香味に似たような方向性が生まれます。また、これらの国以外でも、台湾やフランス、インドなどでもウイスキーを作っている国はあるのですが、生産量・認知度などの点でこれらの国は新世界ウイスキーなどとまとめて表現されます。

5大ウイスキーの成分の比較

5大ウイスキーの成分の比較(単位:ppm) データ元:『酒の科学』p145 吉澤淑

5大ウイスキーそれぞれの香味成分を解析したデータを示します。
黄色い背景になっている値は、5大ウイスキーの中で最も値が高いものです。
また、「香り」に関してはその成分の濃度や、人によって感じ方が変わるため、「一般的に」こういった香りと表現されることが多い、程度に考えていただければと思います。

また、個々の蒸溜所ごとに値は大きく異なる可能性が高く、あくまで「国ごとの傾向」を考えるということを目的にしています。ですので、「このウイスキーはスコッチだからこうだろう」と考えるのではなく、「スコッチだからこういう傾向があるのかな?」ぐらいの認識がいいと思います。

「フーゼルアルコール」はその成分が濃くなるとマジックインキやマーカーなどの化学的な不快臭に感じてしまうことがありますが、適量では香りや味に深みをもたらしてくれる香味成分です。

「エステル」は日本酒などでは吟醸香と呼ばれる類の香りで、フルーティーな香りの成分が多く、果実に多く含まれています。

「脂肪酸」自体は不快な香りを示すことが多いのですが、アルコールと化学反応を起こし、上記のエステルを合成するために必要な成分です。

「材成分」はその名の通り、樽から溶出・分解されて原酒に溶け込んでいく成分です。ウイスキーの熟成に使われる樽はアメリカンホワイトオークという種類の木材を使用していることがほとんどですが、現在ではスパニッシュオーク、フレンチオーク、ミズナラなど様々な種類の木材が使われており、それぞれ特徴的な香味を原酒に与えてくれます。

表を見てもらうと、まずわかるのがアイリッシュとカナディアンがどの項目も他の国に比べ高くないことです。これは、ジャパニーズやスコッチが主に2回蒸溜なのに対し、アイリッシュは3回蒸溜を採用しており、これによって、よりスッキリとしたウイスキーを目指していることが値に表れているのだと考えられます。また、カナディアンは連続式蒸溜によりアルコールの「大量生成・精製」をしているため、よりクリーンな原酒になることがわかっているので、それが値に表れたのではないでしょうか。

同じ連続式蒸溜でもアメリカのバーボンは「新樽の内側を炭化皮膜処理(チャーリング)したものを熟成に使用する」という法律があり、これにより樽材の成分が溶出しやすくなります。「材成分」の最も値が高い項目をバーボンが独占しているのは、このような法律・製法の背景が大きく影響しているのだと考えられます。

ジャパニーズとスコッチはどちらもバランスよく香味成分が含まれており、また両国の値の傾向が似通っています。これは、日本のウイスキーづくりがスコッチの作りをお手本にしているのが表にも表れたのではないでしょうか。日本のウイスキーは、朝ドラ「マッサン」で有名になった竹鶴正孝がスコットランドに修業に行き、ウイスキーの製法を日本に持ち帰ったことから始まったという歴史があります。そういった歴史もこの表から読み取ることができますね。

参考

『酒の科学』吉澤淑 朝倉書店

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