この記事では、ウイスキーの蒸溜に使用される蒸留器、ポットスチルの各部位の名称や、それぞれの役割を解説しています。
ポットスチルの各部位・パーツの名称
底部
ウォッシュ(発酵液)が溜まる部分で、加熱される部分でもあります。加熱方法は様々あり、現在の北海道余市蒸溜所のように石炭による直火加熱が昔は主流でしたが、コスト面で不利なためガスバーナーによる直火加熱にとって代わり、近代ではコスト面・管理のしやすさという点で、蒸気加熱が主流になっています。
胴部
地上部分に見えている膨らみのある部分で、加熱/蒸溜による圧力の上昇に耐えるために球状になっています、また、胴部の形によって中の液体の対流の様子が変わるため、胴部の形も出来上がるウイスキーの香味に大きく影響すると考えられます。
マンホール
マンホールはポットスチルの中の残留物の除去などの掃除・メンテナンスをする際に使用されます。基本的に初留用のウォッシュスチルは赤い装飾、再溜用のスピリットスチルは青色に装飾されているため、マンホールをみれば、ウォッシュスチルかスピリットスチルかを見分けることができます。
グレンガイル蒸溜所のポットスチル 出典:Whisky.com
ボイルボール/逆流ボール
ボイルボール/逆流ボールは蒸気とポットスチル(銅)との接触面積を増やして、銅の触媒反応による好ましくない硫黄合物の香味を抑える効果と、表面積が増えることによる冷却効果で、蒸気が液化し再びポットスチル内へ戻る、逆流を増やす効果があります。逆流の量が増えると、より軽いライトな成分が回収しやすくなり、逆に揮発しにくい重い成分がポットスチル内にとどまるようになるため、各蒸溜所が求めるウイスキーの香味によって逆流ボールの形を変えたり、そもそも逆流ボールを設計しなかったりします。
ヘッド
ヘッドが長い(グレンモ―レンジ蒸溜所) ヘッドが短い(ラガヴーリン蒸溜所)
ヘッドは蒸気が一番初めに通る部分です。ヘッドの長さは蒸溜所によって様々で、ヘッドが長いとヘッドの部分で蒸気が液体に戻りポットスチルへ逆流するためより軽いライトな香味成分が回収され、逆にヘッドが短いと重い香味成分を回収しやすくなります。そのため、各蒸溜所が求めるウイスキーの香味によって長さが設計されています。
サイトグラス
サイトグラスはネックの中部に設置されたガラスののぞき窓のことです。蒸溜の具合を観察することができるので、火加減の調節をする際や、問題なく蒸溜が行われているかを確認するために使用されます。
スワンネック
スワンネックはラインアームとヘッドをつなぐ部分です。ほとんどのポットスチルは滑らかな曲線を描いてつながっていますが、クラガンモアのポットスチルはスパッと切ったような形をしており、クラガンモア蒸溜所はこの形が自分達の求めるウイスキーの香味には欠かせないと考えています。そこからもうかがえるように、スワンネックの形もウイスキーの香味に影響を与え得るのだと思います。
ラインアーム
ラインアームはスワンネックと冷却層(コンデンサー)をつなぐ部分で、このラインアームが上向きになっていると、ラインアーム内で液化したものはポットスチルへ戻り、逆に下向きにつながっていると、ラインアーム内で液化したものはコンデンサーへ流れます、つまり、上向きになっていると逆流ボールと同様に逆流の量が増えるためより軽い印象のウイスキーになり、下向きだと重い印象のウイスキーになります。
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