クラガンモア蒸溜所はどこにあるの?
クラガンモア蒸溜所は、スコットランドの北東に位置するスペイサイド地方のバリンダロッホにあります。スペイサイド地方は大麦の生産地であり、燃料となる泥炭(ピート)も豊富であるため、ウイスキー造りに最適な土地です。
『Cragganmore(クラガンモア)』はゲール語で『突き出た大岩』という意味だそうです。
また、バリンダロッホの年間平均気温は以下のグラフの通りで、年間を通して気温差が少ないとても穏やかな土地です。
クラガンモア蒸溜所の歴史について教えて!
クラガンモア蒸溜所はストラスペイ鉄道に近いことを利用するために、建設された蒸溜所です。創設年は1869年です。
以前に、マッカラン、グレンリベット、グレンファークラスの設立に関わったジョンスミスによって建てられました。
ジョンの死後、1886年からはジョンの兄弟であるジョージによって運営されました。
1917年と1941年には第一次、二次世界大戦により一時的に蒸溜所を閉鎖せざるを得なくなりました。
戦後、再び生産を再開し、1964年にはポットスチルを4基に増設し現在の体制になりました。翌年の65年に蒸溜所はDCL社(現MHD)が買い取り、現在もMHDが所有しています。
製法の特徴は?
原料について
クラガンモア蒸溜所は、蒸溜所の隣にあるクラガンバーンから水をひいています。クラガンバーンの水はミネラルが豊富であり、クラガンモアには欠かせないものです。
また、使用する大麦麦芽(モルト)は軽くピートを効かせたものを、ディアジオの中央モルティングから運んでいます。かつては、蒸溜所内で精麦(モルティング)を行っていたのですが、20世紀後半に終了しました。ディアジオは、通常ローランドやスペイサイド地方の大麦農場から最新の注意をはらいながら選んでいます。
粉砕機について
運ばれてきたモルトは、糖分を抽出しやすいように粉々に粉砕されグリストと呼ばれる状態にします。
クラガンモア蒸溜所は2段式のローラーミルを使用し、モルトの粉砕を行っています。
糖化について
グリストは次に、糖化槽(マッシュタン)へ運ばれます。クラガンモア蒸溜所は容量7トンのマッシュタンを使用しています。
グリストは加熱されたクラガンバーンの水と混ぜられると、グリストに含まれる糖分やデンプン質などが溶け出します。一般的な蒸溜所ではお湯を加え、糖分などが溶け出た麦汁を回収、というのを2回または3回行ってできるだけ、糖分を回収するという方法をとるのですが、クラガンモア蒸溜所は連続的にお湯を加え続け、少しづつ次の発酵槽(ウォッシュバック)へ麦汁を運ぶという方法で糖化を行っています。
ウォッシュバックが麦汁で一杯になっても、しばらく糖化を続け、この最後の麦汁は次の糖化の際に使用されます。
発酵について
クラガンモア蒸溜所はダグラス社が製造した木製のウォッシュバックを6基使用しています。容量はすべて30000リットルです。
木製のウォッシュバックを使用することで、木にその蒸溜所特有の酵母や乳酸菌が住み着き、これらが香味成分を作ることで、その蒸溜所らしさを生み出してくれると考えられています。
ウォッシュバックへ移された麦汁は、酵母が添加されアルコール発酵が行われます。発酵終了後の液はウォッシュと呼ばれる度数約8%程度の、ホップを使用していないビールのような液体になります。
蒸溜について
ウォッシュはポットスチルへ運ばれ蒸溜されます。
クラガンモア蒸溜所は初留用のウォッシュスチル(容量8,725 l)が2基と再溜用のスピリットスチル(容量6,600 l)が2基の合計4基のポットスチルを使用しています。
特徴的なのが、蒸気が上がっていくネックの部分が、通常は滑らかなのに対して、クラガンモアのスピリットスチルは途中でスパッと切ったような平らな形をしています。この部分が平らなことにより、回収される香味成分に影響を与えるため、クラガンモアらしさを出すのにとても重要だと考えられています。
また、冷却方法も伝統的なワームタブ方式で蒸気を冷却し液化させています。ワームタブは、冷水のタンク(”タブ”)に、コイルのようにぐるぐると細長い虫(”ワーム”)のようにパイプを通し、そのパイプの中に蒸気を送ることでゆっくり冷却する仕組みです。
この方法はスコットランドではとても伝統的で一般的な方法だったのですが、ワームタブコンデンサーの使用には、ゆっくりとした蒸溜が必要なため、生産量を求める20世紀にはやや不利になりました。
そのため現在では、スコットランドで12の蒸溜所しか採用していません。
樽詰めと熟成について
ニュースピリットは樽へ詰められると、熟成庫へ運ばれます。クラガンモア蒸溜所では、バーボン樽、シェリー樽、ポートワイン樽を熟成に使用しています。
クラガンモア蒸溜所は3つのダンネージ式倉庫を使用しており、それらは1925年に建てられました。
この熟成庫には他の蒸留所の樽も貯蔵されており、同様にクラガンモア蒸溜所の樽も他の蒸溜所の熟成庫へ運ばれたりします。
これは、熟成庫が壊れるなどの万一の時の保険という役割と、様々な土地で熟成させることで複雑さを生み出すといった目的があります。
おすすめ動画
以下にクラガンモア蒸溜所の紹介をしている、おすすめの動画を貼っておきます。
動画の内容は英語なのですが、ここまでの記事を読まれた方なら英語が苦手な方でも十分楽しめる内容になっていると思います。なかなか行くことが難しいクラガンモア蒸留所の疑似工場見学体験を楽しんでいただけたら幸いです。
おすすめ動画:Cragganmore Distillery Visit(YouTube)
クラガンモア蒸溜所はどんなウイスキーを出しているの?
以下、紹介文・テイスティングノートなどはクラガンモア蒸溜所のホームぺージより引用しています。
クラガンモア 12年
サーモンフィッシングで有名な川の岸に悠然と建つクラガンモアは、多くの愛好家にとって、スペイサイドモルトの決定版であると考えられています。複雑で幾重にも重なるフレーバーが広がる豊かな味わいにほのかにスモーキーなフィニッシュが続きます。
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