今回は「アードベック蒸溜所」について特集します!
アードベッグはとてもクセのあるウイスキーを作っており、好き嫌いが分かれるといわれています。
私自身、最初は苦手だと思っていたのですが、飲んでいくうちにどんどん好きになり、今では大好きなウイスキーの一つです。
すでに大好きな方はもちろん、少し苦手意識のある方、まだ飲んだことのない方がこの記事を読んで少しでもアードベッグに興味を持っていただけたら嬉しいです。
アードベッグ蒸留所はどこにあるの?
アードベッグ蒸溜所は日本から約9000km離れた、スコットランドのアイラ島南部にあります。海沿いに建てられたアードベッグ蒸溜所のウイスキーは潮風を浴びて独特の風味がつくといわれています。
アイラ島の年間平均気温は以下のグラフのとおりで、年間を通して気温差がとても少ない場所です。夏は20℃を超えることが珍しく、冬は雪が滅多に見られない、日本に比べ比較的穏やかな気候です。
また、「アードベッグ」という名前はゲール語で「小さな岬」という意味です。
その名の通り小さな岬にアードベッグ蒸溜所が建てられています。↓
アードベッグ蒸溜所の歴史について教えて!
1798-アードベッグ蒸溜所は1798年からウイスキーを生産していましたが当時は生産量がとても少なかったと考えられます。
1815-創業者のジョン・マクドゥーガルが商業用のライセンスを取得し本格的に産業生産が開始されました。そのため設立は1815年です。
1838-グラスゴーの商人であるトーマス・ブキャナンが蒸溜所を£1800で買収しました。蒸留所の運営はジョン・マクドゥーガルの息子アレクサンダーが引き続き行いました。
1853-アレクサンダーの死後、アードベッグ蒸留所はコリン・ヘイとアレクサンダーの姉妹マーガレットとフローラたちによって運営されました。彼女らはおそらくスコットランドで初の女性の蒸留酒製造業者であったと思われます。
1887-アードベッグ蒸溜所のウイスキー年間生産量が25万ガロン(110万リットル)を超え、アイラ島で最も生産性の高い蒸溜所となりました。
1922-マクドゥーガル家が蒸溜所を£19000で買い戻しました。
1977-ハイラム・ウォーカー社の傘下になりました。
1981-閉鎖を余儀なくされ、約8年間一切の生産を中止していました。
1987-アライド・ライオンズがハイラム・ウォーカー社を傘下にし、その2年後の1989年に少量生産が再開されました。
1997-グレンモ―レンジィによって蒸溜所が買収され、エド・ドッソンによって生産が本格的に再開されました!
2002-蒸溜所はスコットランドの観光局によって4つ星の観光名所に選ばれました。
2008-主力商品「アードベッグ10年」がワールドウイスキーオブザイヤーを受賞しました。
そして現在、様々な商品が発売され輝かしい賞を多数受賞しています。
また、アードベッグ好きのことをアードベギャンとよぶほど世界で広く愛されています。
製法の特徴は?
原料について
アードベッグは大麦を発芽させた大麦麦芽(モルト)を原料に使用しています。
品種は二条大麦のOxbridgeです。(2010)
スモーキーなウイスキーを生産している蒸溜所が多く集まるアイラ島ですが、アードベッグは最もフェノール値の高いモルトを使用しています。その値はなんと約50ppmです。フェノール値とはスモーキー(原料に由来してピーティ―ともいう)な香りの度合いを示す数値で、まったく煙くないウイスキーは0ppmという値を示します。
アードベッグ蒸溜所は1981年以降、自社でのモルティングは行っておらず。モルティング専用のポートエレン社から買い付けています。
粉砕機について
粉砕機はロバート・ボビー社製の2段式ローラーミルで、1921年に設置以降約100年間にわたり使われ続けています。これにより粉砕されたモルトはグリストと呼ばれ、蒸溜所の後ろの丘を約5km上がったところにある”ウーガダール湖”から流れてくる水と混ぜ合わせられます。
糖化について
グリストは糖化(マッシング)のために、容量4トンのマッシュ・タンに運ばれ、まず約63.5℃に熱されたウーガダール湖の水と混ぜられます。64℃付近では、大麦麦芽に含まれる糖化酵素の働きが活発になるため、ここで大麦麦芽のデンプンが糖に分解されます。
糖化によって甘い麦汁(ウォート)が出来上がると、それを濾して糖分を回収します。
糖化によってつくられた糖分をできるだけ回収するために、濾す作業は計3回行われます。
1回目は約63.5℃で濾し出し、残り粕に約80℃の水を加え再度濾します。
最後、3回目は約90℃~100℃付近のお湯を加えて濾し出します。
このように1回目から3回目にかけて徐々に温度を上げることで、効率よく糖分を回収することができます。
3回目の濾し出しが終わった残り粕は、近くの農場の牛のエサとして運び出されます。
発酵について
回収された麦汁は、約18℃に冷却され発酵槽(ウォッシュ・バック)に運ばれます。
アードベッグ蒸溜所には容量28,000 リットルの発酵槽が6基あり、すべてアメリカ松(Oregon pine)から造られている木製の発酵槽です。
木製にすることのメリットとして、甘いエステル香の風味を与えてくれること、保温効果が高いこと、木にその蒸溜所特有の酵母や乳酸菌が住み着き独自の風味をもたらしてくれることなどがあります。
発酵槽に移された麦汁には酵母が添加され、糖分をエタノールに代謝する発酵が開始します。
アードベッグ蒸留所では、ほかの蒸留所よりフェノール値の高いモルトを使用しているため、発酵時間が長くなります。
また、発酵には蒸溜酒用酵母(Distillers Yeast)が使用されています。
発酵終了時のアルコール度数は約8.5%です。
蒸溜について
発酵が終わると、次はウイスキーづくりの花形「蒸溜」です!
アードベッグ蒸留所は2回蒸溜を採用しており、蒸溜基は初溜基(ウォシュスチル)と再溜基(スピリットスチル)それぞれ1基ずつ、計2基のポットスチルによって蒸留を行っています。
発酵が終了した液はまず、初溜基に入れられ蒸溜されます。
初溜基の容量は約18000リットルあります。初溜後の蒸溜液はローワインと呼ばれるアルコール度数約24%の透明な液体になります。
次にローワインは再溜基に入れられ、再度蒸溜されます。
再溜基の容量は約17000リットルで、再溜後の蒸溜液はニュースピリッツまたはニューポットと呼ばれ、アルコール度数は約76%です。ここで、重要なのが再溜によって得られる最初の10分間の蒸溜液(フォアショット’foreshots’と呼ばれる)は不純物を多く含んでいるため、一つ前のローワインの方に戻されます。不純物とは体に有害なメタノールや好ましくない香味成分などです。
また、アルコール度数は、
初留前が8.5%,
ローワインが24%
ニューポットが76%
と蒸溜するたびに約3倍ずつアルコール度数が増えています。
再溜は約4.5時間行われます。
最初の2時間は甘くフルーティな成分が多く、後半にはフェノール類の香味が多く含まれます。
この軽くフルーティ―な香味と重いフェノール類のピーティ―な香りのバランスがとても重要で、これによってアードベッグらしさをもたらしています。
樽詰めと熟成について
蒸溜されたニューポットは、樽詰めされ海沿いにある熟成庫で長い年月熟成されます。
アードベッグではほとんどの樽がバーボンオーク樽で、もともとはアメリカでバーボンの熟成に使われていた樽を再利用しています。また、他にはスコットランドのスペイサイド地方にある製樽工場などからも樽を仕入れています。
これらの樽はチーフ・ノーズ(ブレンド時などの責任者だと思われる)であるビル・ラムスデン(Bill Lumsden)が選定しています。
現在では、シェリー樽やフレンチオーク樽なども多く使用するようになりました。
これらの樽に詰められたニューポットは海沿いの熟成庫で熟成することで潮風などを浴びて、特有の塩辛いヨウ素の香りがつくといわれています。
おすすめの動画
以下にアードベッグ蒸溜所の紹介をしている、おすすめの動画を貼っておきます。
動画の内容は英語なのですが、ここまでの記事を読まれた方なら英語が苦手な方でも十分楽しめる内容になっていると思います。なかなか行くことが難しいアードベッグ蒸留所の疑似工場見学体験を楽しんでいただけたら幸いです。
おすすめ動画:Whisky Distillery Tour: Ardbeg(YouTube)
アードベッグ蒸溜所はどんなウイスキーを出しているの?
以下、紹介文・テイスティングノートなどはアードベッグの日本版ホームぺージより引用(一部筆者訳)しています。
アードベッグ10年
アードベッグ 10年は、強烈なスモーキーさと繊細な甘さが完璧に調和した、世界が熱望する究極のアイラモルトです。2008年ワールド・ウィスキー・オブ・ザ・イヤー受賞。
スペック
熟成年数 : 10年
度数 : 46.0% (ノンチルフィルタード)
樽 : アメリカンオーク(元バーボン)樽(ファーストフィル & セカンドフィル)
テイスティングノート
色 | 淡いゴールド色 |
香り | 爽やかで海を思わせるヨード香、燻製魚、炭焼コーヒーの香りに、柑橘系の果実の香りが加わる。チョコレートとタフィーの甘さ、シナモンスパイス、薬品のようなフェノールの香りが魅力的に入り混じっている。 |
味 | 口当たりは、最初少しぴりっとした刺激があり、その後重厚感が現れ甘美な味わい。 フィニッシュはドライ。タバコの煙とエスプレッソコーヒーのフレーバーとともに、深みのあるピート香が口一杯に広がる。 |
余韻 | 余韻は長く豊かでスモーキー。砕いたピートや麦芽の甘みが残る。 |
アードベッグ ウーガダール
シェリー樽熟成の原酒をブレンドし、甘さとスモーキーさの絶妙なマリアージュを実現しました。仕込み水の湖の名前のウーガダールとは、ゲール語で「暗くて神秘的な場所」の意味。2009年ワールド・ウイスキー・オブ・ザ・イヤー受賞。
スペック
熟成年数 : 非公開
度数 : 54.2% (ノンチルフィルタード)
樽 : アメリカンオーク(元バーボン)樽、ヨーロピアンオーク(元オロロソ・シェリー)樽
テイスティングノート
色 | 濃厚なゴールド色 |
香り | 第一アロマは、クリスマスケーキ、クルミのオイル、潮、スミレ、杉、松葉。くすぶった炭火やなめした革の香りがあたたかさを感じさせる。 スモーキーさの中から、糖蜜のトフィーやチョコレートでくるんだレーズンなどの甘みが顔を出す。加水すると、スモーキーさが強調され、フランベしたクリスマス・プディングを思わせる香り。タールやディーゼルオイルの懐かしい香りに、スグリやベークドバナナ、クルミパン、モカ・エスプレッソの香りが加わる。 |
味 | 口の中を覆うような豊かな味わいと質感。甘さとスパイシーさとスモーキーさが絶妙なバランス。クリスマスケーキのような甘みが舌に溶け込む。はじけるようにスパイシーでスモーキーな風味に、蜂蜜がけした燻製料理や糖蜜の贅沢な味わいが出会い、上質なモンテクリストの葉巻のように、奥深いスモーキーさと豊かな風味が幾重にも重なり合う。 |
余韻 | 余韻は驚くほど長く、レーズンやモカの深い余韻が、豊かなスモーキーさと見事に調和する。 |
アードベッグ コリーヴレッカン
フレンチオーク新樽で熟成した原酒の使用によるスパイシーで力強い味わい。コリーヴレッカンとはアイラ島付近にある世界で2番目に大きい渦潮の名前。2010年World’s Best Single Malt Whisky受賞。
スペック
熟成年数 : 非公開
度数 : 57.1% (ノンチルフィルタード)
樽 : アメリカンオーク(元バーボン)樽、フレンチオーク新樽
テイスティングノート
色 | 深い琥珀色 |
香り | 恍惚とするほど強烈で力強い香りの渦に引き込まれる。タールロープとクレオソートの香りの奔流に圧倒されるうちに、ダークチョコレート、カシス、黒糖の香りに続いて熟したチェリーや松葉の香りが渦の底から湧き上がる。グラスが暖まると、さらにカイエンヌ・ペッパーのかかったステーキやペッパーソースで蒸し焼きにした牡蠣、潮や海草、スモーキーなベーコンの刺激的な香りに、甘いバニラやクローブ、ブルーベリーのニュアンスが加わる。 |
味 | ペッパーステーキのようなスパイシーで強烈な第一印象。さらに飲み進むと、エスプレッソコーヒー、とろけるようなダークフルーツ(カシス、ブルーベリー、チェリー)やアーモンド、アニスの味わいに変化する。 |
余韻 | 香ばしいブラックコーヒー、チョコレートでコーティングしたチェリー、ペッパーソースの余韻が長く続く。 |
アードベッグ アン・オー
3種の樽(バーボン樽、PXシェリー樽、新樽)の原酒を、時間をかけてゆっくりとなじませることによる、角の取れた丸みのある味わい。スモーキーさと甘さが同居する複雑さが特徴です。アイラ島南西部にある岬Mull of Oa(オーの岬)に由来。
スペック
熟成年数 : 非公開
度数 : 46.6% (ノンチルフィルタード)
樽 : アメリカンオーク(元バーボン)樽、PXシェリー樽、アメリカンオーク新樽
テイスティングノート
色 | 明るいゴールド色 |
香り | まろやかでスモーキー。林檎の木を燃やしたような香りと、トフィーやアニスシード、糖蜜やデーツのクリーミーなノート。桃やバナナのみずみずしい果実香。加水すると、ライム、松ヤニ、ウイキョウ、石鹸、タールといった、アードベッグ独特のアロマが現れる。香りの良いロウソクのような、優しいワクシーさとクリーミーさ。スモークしたハーブ。潮っぽい海と海藻の香りが最後に現れる。 |
味 | なめらかでクリーミーな質感。シロップのような甘さ、ミルクチョコレート、糖蜜のトフィー、アニスシード、オレンジ、スモーキーな紅茶の葉、ナツメグやシナモンなどの甘いスパイス、葉巻の煙、グリルしたアーティチョークの風味が現れる。ウッディーさと優しいナッティーさが終始感じられる。甘いフローラルなトーン、ミントトフィー、ビスケットのような優しいノート。 |
余韻 | 魅惑的で濃厚な長い余韻には、アニスシード、ヒッコリー、かすかなスモークを感じる。 |
アードベッグ ウィー・ビースティー5年
「ウィー・ビースティー」はスコットランドの言葉で、小さいながらも強烈なインパクトがあり、手の付けられないリトルモンスターの意味を持ちます。そして、その熟成年数の若さを武器に、スモーキーさの際立つアイラ・モルトに仕上がりました。グラスに注いだ瞬間から、砕いた黒胡椒の強いスパイシーさと樹液たっぷりの松脂の香り、そして強烈な煙の香りを感じます。
スペック
熟成年数:5年
度数:47.4%(ノンチルフィルタード)
樽:バーボン樽、オロロソシェリ―樽
テイスティングノート
色 | 鮮やかなゴールド色 |
香り | 爽やかなハーブに微かにバニラや梨を感じる。砕いた黒胡椒の強烈なスパイシーさと樹液たっぷりの松脂の香り、背景には蜂蜜のかかったハムが潜んでいる。そして強烈な煙の香りがまろやかでスモーキー。加水すると、ベチバーやフェンネルのような多くのハーブの香りが魅了する。 |
味 | チョコレート、クレオソートとタールの強烈な風味が爆発。 |
余韻 | 滋味あふれる肉や塩の風味が長く残り、ココアのほのかな香りがゆっくりと消えていく。 |
アードベッグ トリー・バン19年
アードベッグ トリ―・バン19年は2019年から定番商品としてラインナップに加わりました。コンセプトはその年の個性を楽しめる少量生産のウイスキーで、毎年スペックが変化します。熟成年数は19年で統一されると思われますが、年によって香りや味が異なるため、スペック・テイスティングノートは割愛します。
その他、年に一回アードベッグデーという日に限定商品が出されるなど毎年新しいウイスキーを出しています。
おわりに
以上、アードベッグ蒸溜所特集でした!
興味をもった方はぜひ一度アードベッグ蒸溜所のウイスキーを飲んでみていただけたら嬉しいです。感想・コメントお待ちしています!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
また、お会いしましょう!
乾杯!
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