モルティングとは
ウイスキーの原料である大麦はそのままでは使用することができません。アルコール発酵を行うためには糖が必要であり、大麦の状態では糖はデンプンという形をとっています。デンプンを糖に分解するために、発芽を行い大麦麦芽(モルト)に加工することで初めてウイスキー造りに使用できます。
このための、大麦を大麦麦芽へ加工する過程をモルティングと言います。
昔は伝統的なフロアモルティングという方法でモルティングを行っていた蒸溜所がほとんどだったのですが、現在ではコストの面からフロアモルティングを行っている蒸溜所はほとんどなくなり、工業的にコストを抑えたモダンモルティングという方法で大麦麦芽に加工されたものを使用していることが多いです。
現在でもなお、伝統的なフロアモルティングを行っている蒸溜所をいくつか挙げます。
・ラフロイグ
・ボウモア
・キルホーマン
・ハイランドパーク
・バルヴェニー
・グレンドロナック
・スプリングバンク
モルティングの工程
次に、伝統的なフロアモルティングと近代的なモダンモルティングのそれぞれの工程について紹介します。
フロアモルティング
浸水
大麦はまず発芽のために浸水します。通常は2,3日かけて浸水を行い、大麦に発芽のための準備をしてもらいます。
発芽
浸水を終えると手押し車や熊手などを使って、床一面に約8から12cmの厚さに大麦を広げ発芽を促します。床一面(フロア)に広げることから、フロアモルティングと呼ばれています。
フロアモルティングでは、床に近いところと表面で発芽のスピードが変わってしまうため、定期的(4時間おきなど)に鍬やシャベルを使ってかき回す必要があります。この作業は発芽を終えるまでの約6~7日間継続して行われます。
乾燥
出典:whisky.com 出典:whisky.com
発芽の工程で、大麦から芽がでてきたら乾燥の工程へ移ります。
このとき、デンプンはおおかた糖に分解されており、これ以上大麦が成長してしまうとせっかくの糖を消費してしまうため、乾燥が必要なのです。
この工程でスモーキーな香りをつけたい場合は泥炭(ピート)を焚いて乾燥を行います。
乾燥を終えるとモルティングは完了です。
モダンモルティング
次にモダンモルティングを紹介します。モダンモルティングには大きくサラディン式、タワー式、ドラム式があります。
サラディン式
サラディン式はフランスのサラディンという人が考案した方法で、巨大な箱の中に大麦を1メートル以上の厚さになるように入れ、床から空気を送りながら撹拌することで、大量に発芽をさせる方法です。この方法はタムデューなどが行っています。
また、浸水や乾燥の工程はフロアモルティングと同じです。
タワー式
タワー式はその名の通り、タワー状の建物を使って行うモルティングです。通常は一番上の層から順に浸水、発芽、乾燥を行うようになっており、次の工程へ移るときに一つしたの層に落とせばいいだけなので、とても効率的に大量にモルティングが行えます。
また、フロアモルティングに比べ温度が管理しやすいことから発芽までにかかる日数が2,3日早いのもコストが低くなる要因です。
ドラム式
ドラム式は、ドラム式洗濯機の中で発芽を行っているようなイメージです。中で常に撹拌されるのと、温度と湿度が管理しやすいため、安定して最適な環境で発芽を行うことができるのが特徴です。
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