ウイスキーに含まれるフルーティーな香り成分エステルの香り対応表

ウイスキーの科学

エステルとは

エステルとは

エステル (ester) は、有機酸または無機酸のオキソ酸とアルコールまたはフェノールのようなヒドロキシ基を含む化合物との縮合反応で得られる化合物である。単にエステルと呼ぶときはカルボン酸とアルコールから成るカルボン酸エステル (carboxylate ester) を指すことが多く、カルボン酸エステルの特性基 (R−COO−R’) をエステル結合 (ester bond) と呼ぶ事が多い。

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化学用語が沢山出てきてよくわからないかと思いますが、実はかなり身近にあるものばかりで、カルボン酸を持つ物質で一番身近なのは酢酸(お酢)やクエン酸などです。アルコールはお酒に含まれるエタノールをはじめメタノールや高級アルコールなど様々あります。

基本的にカルボン酸をもつ物質とアルコールが合体したのがエステルなのですが、その組み合わせは無数にあり、エステルと一口にいっても、様々な種類がありそれぞれ香りが異なります。

カルボン酸エステルの反応式を以下に示します。R¹やR²は特に決まっておらず、数式のXやYみたいなものです。ですので、合成できるかは別として、想像するだけならエステルは無限に種類がある事になります。

ウイスキーとエステル

ウイスキーはその複雑な香りと味で人々を魅了しているお酒ですが、その香り成分の一つがエステルです。

ウイスキーに含まれるエステルは主に、発酵の工程で酵母や乳酸菌が合成するものと、熟成の過程で樽の中で合成されるものがあります。そのため、使う酵母の種類や発酵時間、使用する樽などによって合成されるエステルは異なり、ウイスキーに個性を与える要因になります。また、揮発性もエステルによって異なるため、蒸溜の仕方によってもウイスキーに含まれてくるエステルの種類や量が異なってきます。

エステルの合成はよい香味成分を与えるだけでなく、汗や生臭い香りである脂肪酸を減少させる利点もあります。脂肪酸もカルボン酸を持っているので、アルコールと反応して脂肪酸エステルになり、ウイスキーの中に含まれる嫌な香味が、甘い香りに変化するのです。

エステルと香りの対応表

以下の表は、エステルの香り対応表です。
様々な物質があり、その中にも似た香りの物質があったりと、香りの世界の複雑さがわかっていただけるかと思います。

エステルの名前香り
Allyl hexanoateパイナップル
Benzyl acetate梨,イチゴ,ジャスミン
Bornyl acetateパイン
Butyl butyrateパイナップル
Ethyl acetate除光液, 塗料, 接着剤
Ethyl butyrateバナナ, パイナップル, イチゴ
Ethyl hexanoateパイナップル, 若い緑のバナナ
Ethyl cinnamateシナモン
Ethyl formateレモン, ラム, イチゴ
Ethyl heptanoateアプリコット,サクランボ, ブドウ, ラズベリー
Ethyl isovalerateリンゴ
Ethyl lactateバター, クリーム
Ethyl nonanoateブドウ
Ethyl pentanoateリンゴ
Geranyl acetateゼラニウム
Geranyl butyrateサクランボ
Geranyl pentanoateリンゴ
Isobutyl acetateサクランボ, ラズベリー, イチゴ
Isobutyl formateラズベリー
Isoamyl acetate梨, バナナ
Linalyl acetateラベンダー, セージ
Linalyl butyrate
Linalyl formateリンゴ, 桃
Methyl acetate接着剤
Methyl anthranilateブドウ, ジャスミン
Methyl butyrate (methyl butanoate)パイナップル, リンゴ, イチゴ
Methyl cinnamateイチゴ
Methyl pentanoate (methyl valerate)フローラル
Methyl phenylacetateはちみつ
Nonyl caprylateオレンジ
Octyl acetateオレンジ
Octyl butyrateパースニップ(人参に似たセリ科の植物)
Amyl acetate (pentyl acetate)リンゴ, バナナ
Pentyl butyrate (amyl butyrate)アプリコット, 梨, パイナップル
Pentyl hexanoate (amyl caproate)リンゴ, パイナップル
Pentyl pentanoate (amyl valerate)リンゴ
Propyl acetate
Propyl hexanoateブラックベリー, パイナップル, チーズ, ワイン
Propyl isobutyrateラム
Terpenyl butyrateサクランボ
データ元:whiskyscience.blogspot.com

おわりに

ウイスキーには様々な香味成分が溶けており、エステルはその一つに過ぎないのですが、エステル一つとってもその奥深さと複雑さがわかっていただけたかと思います。

これからも、ウイスキーに関する記事を投稿していきます。
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