アメリカのテネシー州で製造されているテネシーウイスキーは炭濾過工程(チャコール メローイング)という特徴的な工程があります。
この記事では炭濾過工程がウイスキーに与える影響について紹介します。
テネシーウイスキーとは
テネシーウイスキーとは法律で定義されており、バーボンに2つの条件が加わったものを満たせば「テネシーウイスキー」と名乗ることができます。つまり、テネシーウイスキーは必然的にバーボンウイスキーの条件も満たしていることになります。
バーボンウイスキー、テネシーウイスキーの具体的な条件は以下のとおりです。
バーボン・ウイスキーの定義:
・原料の51%以上がトウモロコシである
・アルコール度数80%以下で蒸溜
・内側を炭化皮膜化処理(焦がした)した新品のオーク樽で熟成させる
・62.5%以下で樽詰めする
・2年以上熟成させたものは”ストレート”バーボンウイスキー
・熟成期間が4年未満の場合はラベルに熟成年数を表記する
テネシー・ウイスキー:
・上記バーボンウイスキーの定義を満たしている
・テネシー州で生産されている
・サトウカエデの木から作った炭で濾過処理をしている(チャコール・メローイング)
現在では、テネシーウイスキーの銘柄は「ジャック・ダニエル」「ジョージ・ディッケル」「ジェントルマン・ジャック」の3つがあります。
炭濾過工程/チャコールメローイングとは
ここではジャックダニエル蒸溜所で実際に行われている炭濾過工程について解説します。
ジャックダニエルではリンカーン郡製法と呼ばれる炭濾過方法を採用しており、蒸溜所では毎日、サトウカエデ(砂糖楓)というメープルシロップを作る際に使用される木を燃やし、炭を製造します。その炭をタンクの中に敷き詰め約3.3mの炭の層を作ります。
タンクの上にはパイプが通っており、蒸溜したてのニュースピリットを一滴一滴炭の中に落とし、ゆっくりと数日間かけて炭濾過を行います。
濾過後の液を樽に詰めて熟成を行います。
炭濾過工程がウイスキーに与える影響
現在使用されているリンカーン郡法での炭濾過工程は1825年にAlfred Eaton (アルフレッド・イートン)によって発明され、それ以降ジャックダニエルでは欠かせない工程として守られてきましたが、長い間それは経験則的な面が大きく、科学的にどのように影響しているかは解明されてきませんでした。ジャックダニエル蒸溜所のマスターディスティラーであるChris Fletcher (クリス・フレッチャー)は以下のように述べています。「(炭濾過が)香りに与える主な影響は、オイリーな口当たりと粗い香り(主にトウモロコシ)の減少です」(DISTILLER BLOGより)
また、近年(2019年)テネシー大学が炭濾過がウイスキーに与える影響を研究しており、炭濾過工程がウイスキーにどのような影響を与えるのか、その一部がわかってきました。
大学は、炭濾過工程によって大きく変化する香り成分を35個見つけ出し、そのうちの4つ (フルーティな香りを与えるエステルが2つと、モルトの風味を与える分枝アルコールが2つ)が炭濾過によって50%も減少したことを発見しました。(Science Uncovers the Secrets of Tennessee Whiskeyより)
大切なことは、炭濾過は香りを与えるわけではなく、好ましくない香りを取り除くための工程だということです。そのため、使う炭の種類や濾過の長さによって取り除かれる成分は変わってくるはずです。今後、研究が進めば新商品の開発に大きく役立ち、テネシーウイスキーだけでなく他の蒸溜所も炭濾過を採用する時代が来るかもかもしれません。
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