今回は、グリストと呼ばれる粉砕後の大麦麦芽について紹介します。
大麦麦芽とは
大麦はデンプン質を多く含んでおり、ウイスキーのアルコール生成には欠かせない原料です。
しかし、酵母によるアルコール発酵を行うためには、デンプンのままでは酵母が代謝できないため、マルトース(麦芽糖とも呼ばれる)と呼ばれる二糖にまで分解しなくてはいけません。
ウイスキーづくりでは、デンプンをマルトースに分解するために、モルティングと呼ばれる発芽工程を行います。大麦自身もデンプンのままではエネルギーとして使用できないため、発芽させ成長を促すと自身の糖化酵素を使ってデンプンを分解し、マルトースを生成するようになります。そのまま、成長を許すと、せっかくのアルコールのもとであるマルトースを消費して成長を続けてしまうため、ピートを焚いたり、熱風を使って大麦麦芽を乾燥させ成長を止めます。
このような、目的・工程で出来上がるのがウイスキーの原料である大麦麦芽です。
グリスト割合
乾燥が終わった大麦麦芽は保存が効くため、仕込みに使用する分だけその都度、粉砕されグリストと呼ばれる粉末になります。
大麦麦芽に含まれる糖分を酵母に供給するために、水の中に糖を溶かし出す必要があります。そために、大麦麦芽を細かく粉砕するのですが、その粉砕度合いがウイスキーづくりにおいてとても重要です。
粉砕度合いは粗いものがハスク、中程度をグリッツ、細かいものをフラワーと呼びます。ハスク、グリッツ、フラワー、全体をまとめてグリストと呼びます。これらの割合が、ハスクが20%、グリッツが70%、フラワーが10%という割合が、最もウイスキーづくりに適していると考えられています。
なぜ、この2:7:1の割合が適しているかというと、糖分を回収するためにグリストは温水と混ぜられるのですが、ことのき粗挽きのハスクはすぐに底に沈殿して40~50cmの麦層を形成します。そして、糖化後の麦汁はこのハスクの層を通過して濾過され、次の発酵の工程へ進みます。ハスクが濾過の役割をしているのです。濾過後の麦汁が濁っているとその後の発酵の工程へ影響が出るため、麦汁は適度に澄んでいることが求められます。
つまり、グリストが2:7:1より細かく挽かれてしまうと、濾過が十分に行われずに濁った麦汁になってしまい、逆に2:7:1より粗く挽かれてしまうと糖分が十分に回収できなくなってしまうため、多くの蒸溜所がこの割合でグリストを挽いているのです。
参考
・『最新 ウイスキーの科学』p81 古賀邦正
・『スコッチ三昧』p134-136 土屋守
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