グレンガイル蒸留所特集!製法・歴史・種類の特徴を徹底解説!

スコッチ
出典:Whisky.com

グレンガイル蒸溜所はどこにあるの?

グレンガイル蒸溜所は、スコットランドにあるキンタイア半島の南端、キャンベルタウンにあります。
また、キャンベルタウンで有名なスプリングバンク蒸溜所のすぐ隣に位置しています。

キャンベルタウンは17世紀と18世紀の大部分をウイスキーの密輸センターとして使用されていた歴史があります。当時は30以上もの蒸溜所があったのですが、現在では3つにまで減ってしまいました。3つの蒸溜所「スプリングバンク」「グレンガイル」「グレンスコシア」のうち、「スプリングバンク」と「グレンガイル」蒸溜所はJ&A Mitchell and Companyが所有しています。

キャンベルタウンの年間平均気温は以下のグラフの通りで、夏でも平均最高気温が17℃、冬の平均最低気温は4℃と日本に比べ夏と冬の気温差が少ない地域です。

データ元:NOAA

グレンガイル蒸溜所の歴史について教えて!

1872年、グレンガイル蒸溜所はWilliam Mitchell(ウィリアム・ミッチェル)によって設立されました。ウィリアムは同じキャンベルタウンにあるスプリングバンク蒸溜所の創設者アーチボルト・ミッチェルの息子でした。

1800年代後半、ウィリアムは兄のジョンと一緒にスプリングバンク蒸溜所を経営していたのですが、一説によると兄弟喧嘩が原因でウィリアムはスプリングバンクを辞め、あらたにグレンガイル蒸溜所を建てることにしたそうです。

当時、キャンベルタウンは20以上もの蒸溜所が存在していましたが、20世紀初頭の不況の影響で、次々に蒸溜所が閉鎖していきました。グレンガイル蒸溜所もその影響をうけ、1919年にWest Highland Malt Distilleries Ltdによって買収されました。

1924年には£300で再び販売されたあと、1925年に生産が完全に停止しました。また、同年4月8日に原酒のストックがすべて競売にかけられました。

生産を停止した後も、建物は農業会社の倉庫と営業所として何年も貸し出されていたため、保存状態は良好でした。

建物の保存状態がよかったためか、グレンガイル蒸溜所の再稼働の試みが何度もありました。そのうちの一つにグレンスコシア蒸溜所のオーナーであるブロッホ兄弟が建物を買収したことがあったのですが、不運にも世界大戦と重なってしまい再稼働は実現しませんでした。

グレンガイルが生産を停止してから75年後の2000年11月、創設者ウィリアム・ミッチェルの甥であるHedley Wrightが運営する会社が蒸溜所を買い取り、改修を開始しました。

そして、2004年に蒸溜所は生産を再開しました。

製法の特徴は?

原料について

原料の大麦 出典:kilkerran.scot

グレンガイル蒸溜所ではできるだけ地元産の大麦を使用するようにしていますが、その量は年ごとの収穫量によって異なります。いづれにしても、すべてスコットランド産の大麦を使用しています。

大麦は隣接するスプリングバンク蒸溜所でフロアモルティングにより発芽、乾燥までされます。

大麦はまず、大量の水の中に浸水させられ、水分を十分に吸収させます。その後、床一面に約10cmの厚さで広げ発芽を促します。均一に発芽させるために昼夜問わず4時間ごとに鍬を用いてかき混ぜる作業を5~7日間かけて行います。

発芽し、デンプンが最適な状態になったら、今度は乾燥させて大麦の成長をとめます。キルケラン用の大麦麦芽は泥炭(ピート)によって6時間、乾燥とスモーキーな香りづけをした後、熱風により30時間乾燥することで、約15ppmの麦芽に仕上げます。

粉砕機について

粉砕機 出典:Whisky.com

グレンガイル蒸留所では、ボビーミルによって粉砕を行っています。この粉砕機は設備を更新したときにクレイゲラヒ蒸留所から無料で提供されました。

この粉砕機では、4トンの麦芽大麦を製粉するのに1時間かかります。 粉砕の結果、麦芽はフラワーと呼ばれる細挽きが10%、ハスクと呼ばれる粗挽き20%、グリッツと呼ばれる中挽きが70%の割合になります。これらすべてを合わせて、グリストと呼びます。

この割合について、もう少し詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

糖化について

糖化槽(マッシュタン) 出典:Whisky.com

糖化(マッシング)はForsyths of Rothesによって製造されたセミラウター式のマッシュタンで行われます。1サイクルは7~8時間かかり、その間にグリストは3セットのお湯と混合され、糖分が溶け出た麦汁が回収されます。

マッシュタンの中にはステンレス製のアームがついており、糖化の間ゆっくりとかき混ぜ続けています。

マッシュタンの中 出典:kilkerran.scot

発酵について

発酵槽(ウォッシュバック)出典:Whisky.com
ウォッシュバックの中 出典:kilkerran.scot

回収された麦汁はウォッシュバックへと運ばれます。グレンガイル蒸溜所ではカラマツを使用した木製のウォッシュバックを4基使用しています。それぞれの容量は30000リットルです。

木製のウォッシュバックを使用すると、木にその蒸溜所特有の酵母や乳酸菌が住み着くため、それらが、その蒸溜所らしさを生み出すと考えられています。

ウォッシュバックへ運ばれた麦汁には、ゆっくりと発酵が進む酵母が添加されます。グレンガイル蒸溜所では一般的な発酵時間よりも長い72~110時間かけて発酵を行うことで、よりフルーティな香りを作り出しています。

発酵が完了すると、アルコール度数約5%のビールによく似たウォッシュと呼ばれる液体になります。

蒸溜について

ポットスチル 右がウォッシュスチル、左がスピリットスチル 出典:Whisky.com

グレンガイル蒸溜所では初溜用のウォッシュスチルが1基と、再溜用のスピリットスチルが1基の合計2基のポットスチルを使用しています。これらは、閉鎖されたベン・ワイビス蒸溜所から運ばれてきました。

まず、発酵を終えたウォッシュはウォッシュスチルに運ばれ最初の蒸溜が行われます。この時の蒸溜液は度数21~23%のローワインと呼ばれる透明な液体になります。

次にローワインはスピリットスチルへ運ばれ、2度目の蒸溜が行われます。蒸溜の最初の部分と最後の部分はカットされ、その間のハートと呼ばれる中間部分のみが回収され熟成に使用されます。

この時、回収された蒸溜液のアルコール度数は約68%です。蒸溜後のウォッシュの残りは地元の農家が畑の肥料として使用します。

樽詰めと熟成について

樽 出典:kilkerran.scot

回収された蒸溜液はクロスヒル湖の水を使用して63.5%に加水してから樽に詰められます。

グレンガイル蒸溜所では、主にバーボン樽とシェリー樽を使用しており、少量ですがポート、マディラ、ラム樽なども使用しています。

樽は原酒が詰められると、スプリングバンク蒸溜所へ運ばれ、ラック式またはダンネージ式の倉庫で熟成されます。ダンネージ式は伝統的なスタイルで樽は3段以下の高さで積まれますが、ラック式では7段の高さで積まれます。

適切な時間熟成したら、スプリングバンク蒸溜所の瓶詰施設を使用して、瓶詰されます。

おすすめ動画

以下にグレンガイル蒸溜所の紹介をしている、おすすめの動画を貼っておきます。
動画の内容は英語なのですが、ここまでの記事を読まれた方なら英語が苦手な方でも十分楽しめる内容になっていると思います。なかなか行くことが難しいグレンガイル蒸留所の疑似工場見学体験を楽しんでいただけたら幸いです。

おすすめ動画:Whisky Tour: Glengyle Distillery(YouTube)

グレンガイル蒸溜所はどんなウイスキーを出しているの?

以下、紹介文・テイスティングノートなどはグレンガイルのホームぺージより翻訳しています。

なぜキルケランという名前なのか?

グレンガイル蒸溜所は「グレンガイル」という名前の商品は出していません。その代わりに「キルケラン」という名前で出しているのですが、その理由・由来は大きく2つあります。

一つ目は、すでにハイランド地方で「グレンガイル」という名前のウイスキーが出ており、その名前を使用する権利が買えなかったことと、既存のものと自分たちの商品との混同を避けるためでした。

二つ目は、グレンガイル蒸溜所はキャンベルタウンの伝統を継承し、繋げていくことに非常に誇りを持っていることでした。そのため、キャンベルタウンがたっている元の集落の名前「Ceann Loch ”Cille Chiarain”」から名前を付けることにしました。

キルケラン 12年

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